1. ドリップレスノズルの種類

 充填ノズルは、充填する溶液が出てくるパイプ状の部品です。ノズル固定式充填機では、容器の口から数ミリ上に配置されていますし、ノズル昇降式充填機では、充填時に充填ノズルが容器の中に深く入り込みます。充填機を選定する際は、この液だれ対策をどのぐらいしっかりしているかが重要なポイントの一つです。もしノズルが容器の外にある状態でノズルから液が漏れて垂れると、容器の外側を汚したり、充填重量にずれが発生してしまいます。そこで開発技研のノズル昇降式の充填機では、徹底的にこの液だれ問題の対策が立てられています。その一つとして充填ノズルにドリップレスノズルを採用しています。

 ドリップレスノズルは、ドリップ(=液だれ)レス(=なし)という意味で、それ自体が液だれを防ぐ構造になっているノズルです。ドリップレスノズルには、10Aから様々な太さのものがあります。この範囲外のノズルも製作できますが、一般的な充填機ではこの範囲のものを使用します。例外的にノズル圧入充填機のように、容器口の内径が8mm程度と非常に小さいスパウトパックへ等の注入では、充填ノズルの内径も小さく、もともと液だれしないので、ドリップレスノズルは不要です。

ドリップレスノズル10A
塩ビ10A
ドリップレスノズル20A
塩ビ20A
ドリップレスノズルPP25A
ポリプロピレン25A
ドリップレスノズル30A
塩ビ30A
SUS-Dノズル
ステンレス15A
SUSドリップレスノズル
ステンレス1S

図. 様々な太さと素材のドリップレスノズル。下段はステンレス製(SUS304)。10Aノズルは、容器口の内径が18mm~24mmの容器に使用します。BIB容器には20A, ポリコン・タマカンには25Aか30Aを使用します。

 上図で示したように、素材は塩ビ、ポリプロピレン、ステンレス(SUS304もしくはSUS316系)から選ぶことができます(他の素材のノズルはご相談ください)。化学薬品の充填場合は、その溶液の性質に合わせて、塩ビかポリプロピレンから選ぶことが多いです。溶液の有機溶媒性が高い場合や、におい移りしやすい香料、食品系、薬品系の溶液の場合は、接液部がステンレス製の充填機を選択しますが、その場合、充填ノズルも必然的にステンレス製を選択します。ただ、サニタリ仕様にしてこまめに機中配管を洗浄・殺菌などをしない場合は、樹脂の方が良い場合が多いです。いずれにせよ、充填機の洗浄は、現場作業員にとって最も(気持ち的にも)面倒な作業と言えるので、よくよく考えて仕様を決める必要があります。

 下記写真は、充填機β10FMDを例にして、ノズル先端からの液だれのテストを行った際の様子です。

図. 固定ノズル充填機β10FMDを使った液だれテスト。充填後9分たっても充填ノズルから液は一滴も垂れない。このまま充填後20分待っても液は垂れなかった。

 上記のテストは水を使ったテストですが、充填完了時に送液が止まってから約20分間、ノズルから液は一滴も垂れていません(落ちそうな水滴は落ちずにそのままでした)。充填する液の性質によってもこの液だれ防止効果は多少変わってきますが、開発技研ではあらかじめ充填予定の溶液を小量お借りして、溶液の性質確認を行い、液だれ効果が高い最適なドリップレスノズル選定を行っています。そのため納品後、最適な状態で充填作業を行う事ができます。

 このドリップレスノズルだけでも強力に液だれを防止しますが、開発技研の充填機では、更に液受け皿、はね防止版付固定具、充填ノズルの昇降機構に多段階ブレーキ機構などを付けることにより、容器への液だれと充填重量のずれを徹底的に防いでいます。開発技研のノズル昇降式充填機では、1分間に3個以上、1時間に180個以上のペースで20Lポリコン・タマカンを出荷できる充填実績がありますが、それは高速・高精度充填でも容器の外側が汚れない為、ふき取りなどが不要な事も関係しています。